想夫恋焼（焼そば）のルーツを知ろう
日田焼きそばが紹介される時、「日田のラーメン屋さんには何故か片隅に鉄板が置かれている」と、日田の珍しい特徴のように書かれた記事を見かけます。これは、まったく本来の流れを知らない、ただ面白おかしく読者の興味をそそっているに過ぎません。
本当のことを知りたければ、想夫恋の歴史の年表を調べれば一目瞭然です。 元々想夫恋は、焼そば開発のため、１年間ラーメン店を一時しのぎでやっていたという経過があります。(うどんでやっていたらどのようになっていたでしょう。日田のうどん店には何故か…となっていたかもしれません) 想夫恋創業当時の他のラーメン店は、あんな訳も分からない食べ物の専門店でやっていけるはずが無い、と想夫恋を冷ややかな目で眺めていました。 しかし、想夫恋の焼そばの勢いが予想を遥かに超えたため、それならば自分の店でもということになり、想夫恋出入業者及び従業員、知人などから材料や設備関連の情報を得、見よう見まねでやってみたのです。
真似していると気づかれないようにこっそり店内の隅に鉄板を置き、焼きそばを作って提供していたようです。無論その中でも、ラーメン作りにプライドを持っていた人は、絶対想夫恋の焼そばの真似はしないと言う人もいました。 これがきっかけでラーメン＋焼きそばという、日田独特のようになったのです。
日田焼そばとして利用された理由
地方の活性化・観光協会員増等を目指していた協会は、何か全国にアピール出来る食べ物はないかと探していました。
平成１８年頃、日田観光協会の当時の役員により、正式に貴店が先頭に立って盛り上げてはくれまいか、との話がありました。Ｂ級グルメブームの波に乗ろうとしたのでした。最初は、童話の猿蟹合戦の『蟹』のようになりはしないかと非常に懸念しましたが、日田の活性化のためにもと思い、日田市内だけなら良いだろうと深く考えずに賛同しました。しかし当社の各支店が、出店当時は他の地区では悪戦苦闘していたことを考えると迂闊でした。
今では焼きそば研究会というものが作られ、研究会が自ら、日田独自の調理方法を生み出したがごとく振る舞っておりますが、当社以外の苦情もこちらへ来る始末で困っている状態です。
役員としては、協会員を増やす他に、もっと面白おかしく彼らをイベントや町の行事に利用しようというのが狙いだったのだと思います。
それは、確かに地域おこしでイベントの参加により知名度が上がったともいえます。しかし、それでは一時的なブームにしかならないのです。
この焼そばの難しさ
想夫恋焼きは、想夫恋独特の調理方法です。
想夫恋独自のものであり、許可なしに勝手に使用することは許されません。
例）
焦げ目 丸く広げる 外はパリッ 中はジューシー
ソフト こんがり シンプル 茹でる もやし
角切り 生めん 鉄板 ヘラ
を使う 焼そばの調理法。
最後に
しかし、ここまでの広がりを見せている想夫恋焼きを生み出した先代はたいしたものです。生きていたら、今のこの状況をどう感じるでしょうか。 私は皆様方から愛される想夫恋焼きとしての誇りを持ち、原材料・機器・設備、また人材の育成にこだわり、厳しい経営・経済環境の中でこの伝統の味を守り続けていかなければと思っております。
62年間多くのお客様に支持され続けています
想夫恋は焼そば専門店です。しかし、通常みなさんが口にしている焼そばとは一味も二味も違います。まず、使う野菜はモヤシとネギだけ。その他の野菜を使うと水分が出て、仕上がりがベチャベチャになってしまうからです。それともうひとつは肉。薄切りではなく、厚みのある上質な和豚もちぶたを使用することで、食べごたえもあります。そして、最大の違いは焼き方そのもの。私たちに言わせると、通常の焼そばは“五目いためそば”です。なぜなら、焼そばと言いながら、たくさんの野菜と一緒に麺を炒めているでしょう。その点、想夫恋では文字通 り麺を焼きます。それも両面を少し焦げ目がつくくらいまで。こうすることで、表はカリッとキツネ色に焼きあがり、中は柔らかいままジューシーに出来上がるのです。独特の食感とシンプルだけど深い味わい・・・想夫恋でしか味わえないこの味は、長年に渡って、「一度食べたらやみつきになる」と多くのお客様からお声をいただいております。
原材料製造工場計画については、当初は焼そばという単純で誰にでも出来そうに見える料理の材料のために大きな資金をつぎ込んでまで、こだわる必要はないのではと内部や関係者から批判もありました。
しかし、ただ本物を追求したい一心で、製造工場建設に踏み切りました。 これも先代からの確固とした土台があったからこそ出来たものです。 製麺工場47年、精肉工場34年、チルド工場40年、タレ工場47年、資材管理室等と、かなりの年月を費やして参りました。
今日では配送料が値上がりし、遠方の店では一部材料の現地調達をお願いしておりました。しかし、現地調達品ではまるで使い物にならない、想夫恋の味が出ないと言って、かたくなに本部へ材料注文が来る始末です。
同じのれんを挙げての社員・仲間でありますので損得勘定だけの問題ではありません。
普通、お客様は店舗内で調理している所だけしか見ていませんが、工場での原材料製造は一切見れないのです。(例 お客様に感動を与える、わずか15秒のCMを製作するのに最低でも1、2ヶ月はゆうにかかるのと同じです)
原材料の品質で味が95％左右されます。基本的に焼そば用原材料を製造できる専門工場を持たなければ想夫恋の焼そばは作れないのです
第二、従業員（アスリート）を育てるための職場環境整備、従業員教育、寮・住宅、福利厚生設備の充実と後継者の育成です。現在のところ、43店舗中直営店は別として常に頭の隅に置いておかなければならない取り組みです。
第三、当社社員直営店140名中の80％が県外からの新卒就職者です。
近年、少子化、県外流出、人口減と言われていますが、むしろ当社の場合は県外からの流入の方が多いのです。少しでも市内人口減少に歯止めをかける一助になればと思います。
以上、新工場の建設に伴い、当社焼そば「想夫恋焼き」の説明を兼ねましてご挨拶とさせていただきます。
株式会社 想夫恋
代表取締役社長
角 弘 起
